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読む 熊野古道・中辺路Ⅱ 第三話・牛馬童子像~近露王子

読む 熊野古道・中辺路Ⅱ
第三話・牛馬童子像~近露王子

熊野古道・中辺路Ⅱ-3

読む 熊野古道・中辺路Ⅱ

牛馬童子像を後にして、近露王子を目指します。ここからはゆるやかな下りの道となります。木々をゆらす風の音を聞きながら歩んでいくと、前方がひらけあかるくなった場所に出ました。距離道しるべ25が見えてきました。この道しるべは、滝尻王子が起点になっています。近露の地名もこの地ならではのものです。その名の由来は、花山法皇が熊野詣の時に、昼食に箸を求めて生えている葦を折ったとき、葦の軸が赤く染まっているのを見て「血か露か」と尋ねられた事から近露となったといいつたえられています。歴史を感じます。ここからは石畳の急な下り坂で滑りやすく注意が必要です。前回の番組でお話をお聞きしたご夫婦が私の前を歩かれています。見晴らしの良い休憩所に入られるようです。私もご一緒させていただきました。この風景が、休憩所から見た近露の集落の遠景です。私はここで、ご夫婦とご一緒にお昼ご飯をいただきました。楽しい会話が弾んで、いい一時(ひととき)をいただきました。ありがとうございました。昼ごはんを食べてさあ出発です。ご夫婦とは、ここでお別れをすることになりました。ご夫婦は、ここで引き返されて牛馬童子口へもどられました。ここの道も石畳の美しい道ですが、滑りやすいので注意が必要です。石で組まれた段を下りていくと、旧の国道にでます。しばらくアスファルトの道を歩いてゆくとすぐに土道の熊野古道にもどります。ここでも葉桜が迎えてくれて「ようおいなした」と言ってくれているように思えました。一歩一歩、歩むごとに近露の集落が大きく見えてきます。石畳の道を降りていくといよいよ近露の集落です。左手に見晴らしのよい広場があります。ちょっと立ち寄りました。ここは、近露の集落が一望できるビューポイントです。近露桜の園といって、ウォーカーの皆さんに解放されています。オーナーの栗栖(くりす)さんにお話をお聞きしました。・・・・・・・・栗栖さんの話・・・・・・・・・・・・・・ 栗栖さんにおもてなしをいただき、こころも暖かくなり出発です。しばらく歩いてゆくと、日置川(ひきがわ)にでました。この川は、熊野巡覧記によると「入り口に川あり、大石多く渡るに便ならざる川なり。大水には舟渡しあり。川を越え、近露王子御座(ござ)」とあります。昔は橋も無く渡るだけで大変なことだったのでしょう。この川でのみそぎは滝尻王子でのみそぎと同じように重要でした。「近露の水は現世の不浄をはらう」と信じられていました。渡ればすぐに近露王子です。ここが近露王子です。今、社はありませんが「さやわらぶき」の社があったと伝えられ「紀伊続風土記」には「若一王子権現社(にゃくいちおうじごんげんやしろ)、境内40間、神体木像なり」とあります。また、藤原定家は、熊野詣での折、この王子にて次の歌を詠みました。「雲きゆる ちさとのはまの 月かげはそらにしぐれて ふらぬしらゆき」 かの博物学者の南方熊楠もこの近露王子の今はないが当時に有ったおおきな杉群を乱伐から守るためしばしば訪れたとの事です。次回は、太平記の野長瀬一族の墓をとおり「ひそ原王子」までの道を紹介します。

熊野古道・中辺路Ⅱ 地図のご案内

熊野古道・中辺路Ⅰ

大坂本王子から小広王子まで

大坂本王子→牛馬童子口→牛馬童子像→近露王子→比曽原王子→継桜王子→中川王子→小広王子

協力:社団法人 和歌山県観光連盟

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