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読む 熊野古道・中辺路Ⅰ 第八話・大門王子~十丈王子

読む 熊野古道・中辺路Ⅰ
第八話・大門王子~十丈王子

熊野古道・中辺路Ⅰ-8

読む 熊野古道・中辺路Ⅰ

大門王子(だいもん)を後にして十丈王子(じゅうじょう)を目指します。前方右斜めより光が差し込み幻想的な熊野古道の風景へ入り込んでいきます。このあたりの道は比較的平坦で小石交じりの土道です。しばしば木々のねが道に這い出しています。木々の根を踏んだ時「(女性的に)いたいよ」「(男性的に)いたいじゃないか」の木々の声が聞こえてきそうな錯覚におちいります。「通してくださいね」と心に念じます。美しい古道に木の陰と光が織り成して絵のような風景です。感動的と言っていい美しさです。光が強くなると影が濃くなる。陰と陽を繰り返しながら、コモリクの国の中を歩むウォーキングです。実は左側は絶壁なのですが不思議なくらい安心して歩けます。熊野の神々の静寂の中を歩みます。ここからは少し下りの道です。しばらくすると先に距離道しるべ12が見えてきました。ここがちょうど滝尻王子から6キロメートルきましたよの印で緊急時にはこの番号が重要となります。この道を歩んでいると、私たち人間は、この自然に生かされていることをしみじみ感じさせられます。この辺は左側が絶壁ですので気をつけて歩んでください。しかし不思議と不安感はありません。前方に白く輝くものが眼に飛び込んできました。正体は昨晩降った雪が消えずに残っていためのものです。何かもったいないもの、こわしてはならない物を踏むかのように、おそろおそろ歩みます。道に真ん中に切り株が並んでいて、まるでセーターのボタンのようです。深い緑がまぶしい道に出会いました。そしてしばらくすると、神々の光のように道へ光が差し込んでいます。「もう・・祈りながら歩きます」「この世に命を与えていただいたことに感謝し、家族が平穏無事に暮らしていけるように祈ります」わたくの影が長く見えます。太陽が沈む時刻がせまっています。道中見晴らしの良いところからの熊野の山並みの眺望です。「実に美しい」汗をかき登って来たウォーカーへの神々からのご褒美だろうか・・・。すがすがしい心持で、下りの道を降りていきます。距離道しるべが見えてきました。どんどん下ります。太陽の光を背中にうけて、背中を押されるように前に進みます。前方に十丈の休憩所が見えてきました。苔むした丸太づくりの休憩所です。そのそばにソーラー式の非常用衛星電話が設置されています。本当に細やかな心遣いを感じます。和歌山県、和歌山の皆さんお見事です。おもてなし五つ星です。その休憩所を後に進むと前方に十丈王子跡が見えてきました。今は社も残っていない王子跡です。ここでのトイレも太陽光パネルを電源にしたバイオトイレに建て替えられていました。これもお見事の一言。南方熊楠が見たらほくそ笑むことでしょう。次回は上多和(うわだわ)茶屋跡まで道のりを紹介いたします。

熊野古道・中辺路Ⅰ 地図のご案内

熊野古道・中辺路Ⅰ

滝尻王子から大坂本王子まで

滝尻バス停→滝尻王子→不寝王子→剣ノ山経塚跡→距離道標4→高原熊野神社→一里塚跡→大門王子→十丈王子→上多和茶屋跡→大坂本王子

協力:社団法人 和歌山県観光連盟

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