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読む 熊野古道・中辺路Ⅰ 第九話・十丈王子~上多和茶屋跡

読む 熊野古道・中辺路Ⅰ
第九話・十丈王子~上多和茶屋跡

熊野古道・中辺路Ⅰ-9

読む 熊野古道・中辺路Ⅰ

十丈王子(じゅうじょう)を後にして上多和茶屋跡(うわだわちゃやあと)を目指します。太陽が一段と西に傾き、背中からその暖かさに押されるように、前に進みます。ここも木の根が道に這い出しているコースです。落ち葉が道一面に積もって絨毯のようにフカフカしています。そのゆるやかな登りの道をゆっくり歩みます。右側が切り立ったような道ですが、木々がウォーカーを守っていてくれています。しかし十分に注意が必要です。熊野の神々の静寂の中を歩みます。周囲には人と言えば、私一人、しかし不思議と何の不安もありません。左側に黄金に輝き、スポットライトを浴びるように小さなお地蔵さんが、浮かびあがっています。小判地蔵です。嘉永7年(かえいななねん)1854年の年号が刻まれています。地元のひとの言い伝えでは、小判を口にくわえて行き倒れになった人を祀ったものだと言われています。このお地蔵さんニコッと笑っているように見えました。熊野古道には、こうした行き倒れの人を供養した墓があちらこちらに見られます。しばらくすると先方に距離道しるべ15が見えてきました。ここがちょうど滝尻王子から7.5キロメートルきましたよの印で緊急時にはこの番号が重要となります。この道しるべのすぐ近くに、悪四郎屋敷跡があります。「あく?わる?」昔は、力持ちなどに悪とつけたといいます。悪四郎も本名は十丈四郎といい、大変な力持ちであったという、この近くには悪四郎山があり、熊野に多い強力(ごうりき)の伝承話です。ここからは少し下りの道です。今度は左側が切り立った道です。このあたりも細い道で、一人がやっと通れる道です。注意をして歩きます。この道を歩んでいると、私たち人間は、この自然に生かされていることをしみじみ感じさせられます。ここからは、すこし明るくなりました。ちょうど背の低い落葉樹の木々の間を抜ける道で、太陽の光が道にそそいでいます。どんどん下っていきます。下りはひざに負担がかかりますが、落ち葉がクッションの役割をしてくれて、ウォーカーにやさしい道です。落ち葉を手にとって見ました。カシ類の葉っぱです。前方に一里塚跡の石碑です。すぐ近くに距離道しるべ17が見えてきました。全体的に光が赤味をおびだしました。日暮れが迫っています。前方に今回のゴール上多和茶屋跡(うわだわちゃやあと)が見えてきました。上多和は、中辺路の三体月の伝承の残るところで、近年大勢の人が、山頂から拝もうと全国から集って(つどって)います。次回はその三体月のみえるポイントを訪ね、そして大坂本王子跡までの道を紹介いたします。

熊野古道・中辺路Ⅰ 地図のご案内

熊野古道・中辺路Ⅰ

滝尻王子から大坂本王子まで

滝尻バス停→滝尻王子→不寝王子→剣ノ山経塚跡→距離道標4→高原熊野神社→一里塚跡→大門王子→十丈王子→上多和茶屋跡→大坂本王子

協力:社団法人 和歌山県観光連盟

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