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第一話 運命の出会い◆「僕は猫のハーティ」スニーカーをはいた猫の物語

WSTV連載小説

「僕は猫のハーティ」
スニーカーをはいた猫の物語

植村 鮎

第一話 運命の出会い

僕は猫のハーティ。

何故この名前かっていうと、ちょっと話しは長くなるのだ。
僕が最初に出会った人間の子供の中で、僕のことをジッと見つめる子供がいた。眼がクリッとして、真剣な眼差しで僕のことを見続けていた。あとでわかったのだけれどその子がひろきという男の子だ。
僕とひろきの出会いだ。僕の友人のひろきが僕を公園のダンボールの箱から連れて行ってくれて、そっと家の中にいれてくれたのだ。
ひろきは、おかあさんにわかってしまうのが怖くて、僕に「シー、シー」と合図を送ってきたので、僕も我慢して、鳴かなかった。
だけど、ひろきが僕の前足を不意に踏んづけたので「ギアー」と大声で叫んでしまった。
おかあさんが「あら猫」とあまりビックリしていないような声で僕を見つめた。
僕はめいっぱいかわいく、そして哀れっぽくそれと痛さで「ニアオー」と鳴いた。
「やせぽっちの子猫ね」と言って、おかあさんは僕をじっくりみていた。
僕はまた「ニアオー」と鳴いた。
今度はおなかが空いていたので思わず鳴いてしまったのだ。
「おかあさん飼ってもいい?」
「ねえいいでしょう」
ひろきがおかあさんに、僕がまとわりつくのと同じようにだきついた。
おかあさんは遠くをみるように「困ったわね」とまた、僕をみつめた。
僕はこんどは、眼いっぱいかわいく「ニアオー」と鳴いた。
「こまったわね」とまた言いながら「おとおさんが良いといったらかまわないわ」といってくれた。
僕はおもわず「ニアオー」と鳴いた。
ひろきがうれしさのあまりとびあがり「ほんとにほんと」といいながら僕をだきあげた。
「おとおさんがいいといったらね」とお母さんが笑いながらいった。
「おとおさんは猫大好きだからきっといいって言うよ」
ひろきは、きっといいってとなんどもくりかえしていた。
そして、牛乳をぼくにくれた。
冷たい牛乳で、でもお腹がすいていたので美味しかった。
その様子を二人がみつめていた。
「おなか空いていたんだ」とおかあさんがいうと、「やせているねえ」とひろきがいったので、ありがとうをこめて「ニアオー」と鳴いた。
「この子猫なんて呼ぼう」というひろきの言葉に、お母さんが、「アラ!この子猫おなかにハートのマークがあるねえ」からひろきが「ハート、ハート、ハーティ!ハーティがいい!」という訳で、これが僕の名前のゆわれなのだ。

それ以来、僕とひろきはけんか仲間であり、ライバルであり、親友なのだ。
スニーカーをはいた猫、僕の話の始まりだ。