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読む 熊野古道・中辺路Ⅱ 第六話・継桜王子~中川王子

読む 熊野古道・中辺路Ⅱ
第六話・継桜王子~中川王子

熊野古道・中辺路Ⅱ-6

読む 熊野古道・中辺路Ⅱ

継桜王子(つぎざくらおうじ)を後にして、中川王子を目指します。しばらくは舗装された熊野古道を歩くと「どがの木茶屋」です。茅葺の建物が昔の賑わいを現代に伝えています。そしてちょうど茶屋の向かいに道があり、坂を下りていくとすぐのところに野中の清水があります。古来一度も枯れたことがない湧(わ)き水です。日本名水百選の一つに選定され、現在も地元の人達の貴重な飲料水、生活水として利用されています。江戸時代にこの地を訪ずれた芭蕉門下の服部嵐雪(らんせつ)が、この野中の清水を見て、次の句を残しています。すみかねて道まで出(で)るか 山清水(やましみず)また、ここには、斉藤茂吉の歌碑があります。いにしえの すめらみかども 中辺路を越えたまいたり のこる真清水(ましみず)法皇、都人、平安庶民、歌人、俳人の足音、のどを潤し「ほんとにおいしい水!」の感嘆の声が聞こえてきそうな空間でした。とがの木茶屋の前の道に戻り、中川王子を目指します。前方の空に雨雲が覆いかぶさっています。「こまったなー」と思いつつも前進あるのみです。とかの木茶屋の施設を左右に見ながら進みます。ここからの道も舗装された歩きやすい道です。しばらくすると、前方に熊野古道をおおうような大きな桜の木が見えてきました。これがかの有名な秀衡桜です。満開の時期を見計らって来たつもりでしたが、すこし遅れました。皆さんに満開の桜をお見せできないのが残念です。ここには、高浜虚子親子三代の句碑が残っています。まず虚子の句。うぐいすや 御幸の輿も ゆるめけん 虚子 虚子の次女の星野立子(ほしのたつこ)の句 うぐいすの 句碑守る老(ろう)に 別れ惜し 立子 そして、虚子の孫にあたる稲畑汀子(いなはたていこ)の句 中辺路は 峡(きょう)深き里 暮れ早し 汀子 桜は奥州秀衡三代桜、句は虚子三代句。三代同士で「いとおかし」です。秀衡桜をあとにして、先を急ぎます。雨脚が強くなってきたので、この右側の民家の軒下をお借りして、雨宿りをしました。すこし、雨脚が落ち着いてきたので、さあ出発です。ここで、秀衡桜の伝えられているお話をご紹介しましょう。藤原秀衡が熊野を参詣した時、この地で秀衡の子供が生まれた。秀衡は大変喜び、わが子の無事成長を祈念して、そこにあった桜を手折って、桧の株にさしたのが、成長して、まことに珍しい姿の継桜になったという。この伝承が残っていて、話が広まり、いつしかこの継桜を秀衡桜とよぶようになった。これが秀衡桜のゆわれです。後日、秀衡のゆかりをもって、みちのくの中尊寺の庭に、この桜が移植されています。さどかし美しい桜なのだろうと思いをはせていると、雨粒に顔をうたれ、現実に引き戻されました。私のさくらは散る寸前です。しばらくはこの様な道が続きます。苔むした石垣、ここの桜は、もうすでに葉桜になっています。少し進むと、解説板、なんでしょう。登って行くと、一休みするには、手ごろな石です。この石は、かの有名な陰陽師阿部清明の「こしかけ石」、もしくは「とめ石」と伝えられています。とめ石の伝承は、花山法皇の熊野御幸に同行した安部清明が、土砂くずれの危険を察知して、災害を防ぐために式神(しきがみ)をとめたと言う「とめ石」だといいます。しかし座るにはもってこいの石です.このくぼみがおしりにぴったりはまりそうです。ちょうどこの清明の石の前に、道しるべ35がありました。私は今、清明のように祈っています「雨よ風よ消えよ!」と、しかし、わたしには、霊力はありませんから清明さんお願いします。左右の人家の間のみちを進みます。分岐点に来ました。旧の国道311号線と合流しました。この道をひだりへ進みます。画面でもおわかりでしょうか、知らず知らずのうちに早足になっていて、画面のぶれがひどくなってきています。雨風もひどくなってきました。清明さんのまねごとをしたので、風神雷神の怒りをかってしまったのでしょう。しばらく歩いていると、左側に大きな封鎖されているトンネル、その前にバス停、熊野古道を歩く時、バスの拠点の一つです。この辺は人家も多くてねその間を抜けていきます。すると左側に子供の木の人形、おしっこをしています。こどものおしっこの正体は湧き水です。そこにひしゃく。飲んで行ってねと言うことでしょうか。なかなかのシャレです。「ぼくのおしっこ清らかだよ」といって笑顔一杯です。しばらく歩いていくと、杉木立に守られて、安部の清明さんのおかげでしょうか雨がやんでいました。前方に今回のゴール中川王子跡が見えてきました。この道しるべから少し上った所に中川王子跡があるといいます。細い土道を登って行くと、木立の中にポツンと中川王子を示す石碑があります。この碑は、江戸元禄の頃に藩命で立てられたものが現在まで残っています。次回は、本シリーズ最終話、小広王子までの道を紹介します。

熊野古道・中辺路Ⅱ 地図のご案内

熊野古道・中辺路Ⅰ

大坂本王子から小広王子まで

大坂本王子→牛馬童子口→牛馬童子像→近露王子→比曽原王子→継桜王子→中川王子→小広王子

協力:社団法人 和歌山県観光連盟

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