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読む 熊野古道・中辺路Ⅰ 第七話・一里塚跡~大門王子

読む 熊野古道・中辺路Ⅰ
第七話・一里塚跡~大門王子

熊野古道・中辺路Ⅰ-7

読む 熊野古道・中辺路Ⅰ

一里塚跡休憩所を後にして、大門王子を目指します。木々のこぼれ日を身体全体で受け、心地よい道を歩んでいくと距離道しるべ9に到達しました。ちょうどここが滝尻王子より4.5キロメートルの地点です。また、先程の道しるべは、緊急時の連絡に対応していて、事故などが起こった場合、救出地点の目印となります。陰と陽を繰り返して歩んでいると、まるで平安時代にタイムスリップしたような気分になりました。ちょうどこの冬の時期は、ウォーカーも少なく、熊野古道の素晴らしいこの道を独り占めして歩いています。ここも平坦な土道で、快適そのものです。ここは、左右に木々がありますから、わかりにくいですが、山の稜線ぞいに道があり尾根を歩いています。木々がなければ左右が絶壁ということです。落葉樹の落ち葉が道にびっしりとひかれたような道です。こんな道は、他のコースでは味わうことはできません。落ち葉を踏みしめる音が、静寂の道に響きます。ゆるやかな上り坂が続きます。距離道しるべ10を過ぎても、落ち葉がびっしりと絨毯のようにひかれた道が続きます。足にやさしいウォーカーにとって最高の道です。道中、大きな石小さな石が積まれているのに出会いました。祈りの道ならではでしょうか。一つ積んでは祈りまた一つつんでは祈る熊野古道は祈りの道です。光と影が模様のように織り成す美しい道です。前方が急に明るくなりました。高原池が見えてきました。普段は池の水のみどりが美しい池ですが、昨日からの寒さで、凍りついていて白くなり、空気がピーンと張り詰めた格別の美しさに出会えました。高原池を後にして大門王子へ向かいます。シダ類が斜面にびっしりと群生しています。この熊野の森は、菌類の宝庫です。和歌山が生んだ世界的博物学者南方熊楠も、この山中に何日も入り、昆虫や植物を採集し「てんぎゃ(天狗)」というあだ名がついていたといいます。この熊野古道が今に残っているのも、南方熊楠が、明治40年に神社合祀反対運動をおこしこの森を守ったおかげと言えます。そして、この運動は、日本での自然保護運動、エコロジー活動のさきがけと評価されています。シダの群生する道を歩んでいると、南方熊楠の足音が聞こえてきそうです。大門王子はこちら、分かりやすい道標です。ここからはまた、小石と木の根の上り坂になります。ここの道はよく整備されて、木で段をつけてくれていて安全で歩きやすい道です。前方に青い看板が見えてきました。大門王子です。大門王子の名のいわれは、熊野本宮大社の大鳥居があったという事柄からきているといいます。跡地にはその大鳥居はなく、徳川頼宣(とくがよりのぶ)が造らせたという緑泥片岩(りょくでいへんがん)の石碑が残っています。次回は十丈王子まで道のりを紹介いたします。

熊野古道・中辺路Ⅰ 地図のご案内

熊野古道・中辺路Ⅰ

滝尻王子から大坂本王子まで

滝尻バス停→滝尻王子→不寝王子→剣ノ山経塚跡→距離道標4→高原熊野神社→一里塚跡→大門王子→十丈王子→上多和茶屋跡→大坂本王子

協力:社団法人 和歌山県観光連盟

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