「僕は猫のハーティ」
スニーカーをはいた猫の物語
第二話 お父さんはいい人だ、リコ姉さんもいい人?
次の朝、僕は鳥の鳴く音で眼が覚めた。
そのリズムが気持ちよくて、ウトウトして大きなあくびをした。
その時おおきな声が鳴り響いた。
「チビがふんばってあくびをしているぞ」と大人の男の人の声だった。
僕ら猫は、背を丸め手足を必死に伸ばし、指は肉球が弾けんばかりに開くのだ。
だってこれが僕らの習性だ。
声が響くのは、僕の寝床がダンボール箱にひかれたタオルだからで、耳にガンガンくるのだ。
「お父さんチビじゃないよその子の名前ハーティと言うんだよ」
とひろきがうれしげにしゃべった。
実はお父さんは僕の事をジッと見ていたらしい。
「ほほう、黒いハートのマークが付いてるな」と珍しげに大きな人差し指で僕のお腹の脇をなぜた。
そして、僕のあごの下をなぜてくれた。
「ぐるぐる、ぐるぐる」と、僕は自然と鳴いてしまう。
「やせっぽっちだなあ。おーいおかあさん!牛乳牛乳すこし温かくして持ってきてくれないか」
おかあさんは、牛乳を温めると小さなお皿に入れて持ってくると、ひろきの頭をなぜながら
「よかったねひろき」
「うん、うん」とひろきが、うれしそうにうなずいていた。
すると横から、姉のリコが「我が家にもう一匹、弟ができたか。こりゃ楽しみだ」とにこっとしてしゃべった。
「温かいミルクは格別おいしかった」
僕は、涙が止まらなかった。お父さんはいい人だ、リコ姉さんは・・・・いい人だと思う。
この日から僕は、ひろき家の次男坊となった。